理事長コラム『普段着の生活』
2018年4月27日(金)
先日、骨折手術のため2泊3日の入院を経験した。
その病院では病衣と下着を貸してもらえるとのこと。
「荷物が少なくて便利だなぁ」と病室に入ったのだが、
いざ病衣を前にするとどうにも着る気になれない。
着替えた瞬間から「病人」然とした姿になり、それだけで気分が滅入る。
逡巡の末、「まあ、周りも着ているから」と着てみたのだが、
とたんにベッドの上で過ごさねばならないような気分になってしまった。
当院では25年ほど前に患者様の普段着への着替えに取り組み始めた。
着替えは高齢者にとって関節の曲げ伸ばしや筋肉への刺激になり、
拘縮予防の効果が大きい。
また、認知症の患者様には夜と昼、静と動の意識を
切り替えるスイッチとなることもわかり、
出来るだけ普段着でお過ごしいただこうと
多くの人手をかけてこの取り組みを続けてきた。
さて退院の日、
病衣を脱ぎ、シャワーを浴び、普段着に着替えた。
そのときの解放感。
ついさっきまでと体調や痛みが変わったわけでもないのに、
背筋は伸び、やる気が満ちてきた。
理屈はともかく「普段着の生活」は
患者様を元気にする第一歩なのだと、身をもって知ることとなった。