2011年11月1日 『十人十色』
病棟で食事風景を見ていると、まずデザートから手をつける患者様が驚くほど多い。
ご本人曰く「お腹一杯になる前に、好きなものから食べる」のだという。
その究極が「まずデザート」である。
子供の頃、デザートから食べようとすると叱られたものだが、人生の最終コーナーを走る高齢の患者様に「好きなものから食べてはだめ」と叱る権利は誰にもない。
良く考えてみれば、少量でもカロリーが高い甘いものを真っ先に食べることは生存本脳からも理にかなっているように思える。
一般的に高齢者は味覚が変化し、濃くはっきりした味を好むようになると言われているが「まずデザート」はそんな次元を超えた好みに思える。
そもそも高齢者に限らず味の好みは十人十色である。そこに高齢者の心情まで加わるのだから状況はますます複雑になる。そしてこれが高齢者に三食を提供する者の悩みでもある。
全ての患者様に美味しいと言って頂ける味付けの実現は難しいが「自分の親を安心して預けられる施設」を目指すのだから、せめて自分はここで毎日食べてもいいと胸を張れるような食事を提供し続けたいと思う。